おれんじきっちん

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50代の脱サラをした夫婦が、第二の人生として選んだのが、故郷の田舎町でのパン屋開業である。
敷地は京都・天橋立付近の地元公立高校の正門脇にあり、主に部活で多忙な高校生や近くの地域住民のために手作りパンを提供している。

夫婦の長年の夢を託された空間は、わずか6坪程度。 そのなかに、厨房と販売レジコーナー、カフェスペース、トイレが納まっている。 厨房とカフェの関係、トイレの配置など、6坪の中であらゆるパターンを想定し検討を重ねた。
各種パンだけでなく、ケーキや週末用のランチも作る厨房は、二人がかろうじて立つことができる広さである。
トイレへは外のテラスや庭を通りながら行く。 カフェスペースとは切り離し、外部からの出入りとすることで気兼ねなく利用でき、またカフェでくつろぐ雰囲気を損なわないように配慮している。

正面の販売コーナーは、陳列しているパンやケーキが美味しく見えるよう、ぬくもりを感じる木を多用し構成している。
予算が厳しいこともあったが、木部の木らしさを際立たせるものとして、外壁はトタン張りという存在感を極力感じさせない素材を選択した。 庭の緑や花々は、夫婦が毎シーズン趣向を凝らし、きれいに整えられている。 シンプルで無機質な外壁との対比により、一層生命力を感じさせるような彩りのある風景である。

夏場は35度を越す猛暑が続く一方、冬場には50cmほどの雪が降り積もり日本海側の寂しげな雰囲気が町中を覆う。
寒暖の差が激しく、また賑やかさを失いつつある地で、このパン屋は素朴な佇まいと店主夫婦の温かい人柄で地域の人々に親しまれている。

【概要】
用途  :パン屋を営む店舗
敷地面積:132.90㎡
建築面積:22.07㎡
延床面積:21.41㎡
構造  :木造在来軸組工法
階数  :1階
設計期間:2007.06~2007.11
施工期間:2007.12~2008.03
設計監理:オカダ建築設計事務所 担当 / 谷口みのり
施工  :萩原建設