西尾の家
30代若夫婦の住宅である.敷地は昔からの長屋のような古い商家が立ち並ぶ場所にある.
二つの大通りに挟まれている広大な敷地の一方には両親が住む住宅があり,中央に広い中庭を介してこの住宅はある.
よく見られる長屋の敷地のように,間口は狭く3間ちょっとであり,両側から敷地境界いっぱいに隣家が押しせまる.
昔、この一帯は商店で賑わう市髄一の通りであった.
バイパス通りの進展と引きかえに今ではその活気は薄れ,建て替えられる住宅はみな,通りに対して背を向ける.
界隈に数多く点在するお寺だけが,昔の情緒を残し風通しのいい佇まいを見せている.
住宅は個人のものでありながらも,街の風景の一部でもある.
通り行く人々の記憶に何かを残すような,あるいは想起させるようなものとしての存在をここに現したかった.
そのため、敷地間口を建物で完全に塞ぐのではなく,通り庭を設け敷地奥の中庭まで見通せる,視界の抜けや風通しが気持ちが良い計画とした. また,立面を分節させることにより建物の威圧感を軽減させている.
そして,狭小地であるがゆえの切実な夫婦の願いは,陽が差し込む明るく開放的な空間であること.
一方で,遠くから見知らぬ土地に嫁いできた妻の思いは,中庭を挟んで向かいに立つ母屋からあまり干渉されずに守られていること.
狭小地であるがゆえに明るい室内環境を求めて,居住空間はリビング・ダイニングキッチン・主寝室・浴室などの水廻りを2階で固め,2階ですべて生活が成り立つようにしている.また,2階には光庭であるグレーチングテラスも設けている.
もともと間口の狭いところではあるが,あえて半分ものテラス空間を設けることで,隣地側にそれほど窓を設けなくても,内部空間いっぱいに光を満ち溢れさせることができる. 居住面積には変えられない開放的な空間を創り出している.
居室ごとに適切な天井高を設定し,その差から生じるハイサイドの窓からも光が差し込む.
テラスはグレーチングであるために,1階の通り庭にも光を落とす階段の吹抜けとの相乗効果により,1階も光が存分に降り注ぐ明るい空間となる.
住宅の建ち方という外からの視点と,生活という内からの視点が互いに関係性をつくりだし,このような住宅を導いた.
【概要】
用途 :専用住宅
敷地面積:229.42㎡
建築面積:68.16㎡
延床面積:81.77㎡
構造 :木造在来軸組工法
階数 :2階
設計期間:2006.01~2006.09
施工期間:2007.10~2007.04(既存解体・造成工事含む)
設計監理:オカダ建築設計事務所 担当 / 谷口みのり
施工 :株式会社オカダ
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