敷地は宮城県美里町にある。美里町は水田や畑が土地の約70％を占める県有数の食糧基地でもある。

この自然豊かな土地と、法人の理念である「食」や「森」への想いが合致し、計画がスタートした。園舎を建てるには十分な広大な敷地に、保育の考え方を丁寧に汲み取り設計を進めた。

園舎は、子どもたちが伸びやかに過ごせるように平屋としている。10年後に森になることを目指した園庭をどこからでも眺め、いつでも駈け出していけるように室を配置している。また、子どもたち自らが思い思いに場所を選択し活動することを意図して、大小さまざまな場所を用意している。場所によって幅の異なる廊下は、多様な使い途を想定した。絵本を読んだり、お友だちと製作したり、机を並べてお昼ご飯を食べたり、ひなたぼっこしたまま、ついうとうとお昼寝…。廊下の先には軒下の縁側空間が連続し、内でありながら外へと意識が拡がる場所となっている。雪が積もり風が強く寒さの厳しい日であっても、子どもたちは元気に園庭にくりだしていく。あちらこちらで子どもたちの賑やかな声が響き渡る。

園内には陽の光が十分に差し込み、木のぬくもりに包まれる。毎日、子どもたちが園庭や森から持って帰ってきた自然物であふれている。

いつもの日常、いつもの生活。穏やかな時間がそこには流れている。

[概要]
用途：保育所
敷地面積：9919.14㎡
建築面積：1073.40㎡
延床面積：994.99㎡
構造：木造
階数：平屋
設計期間：2019.03～2019.08
施工期間：2019.09～2020.03
設計監理：一級建築士事務所　アーバンスケープ
施工 / 写真提供：建築工房零